「そうだ。ソロキャンプに行こう。」
「んん?」
((そもそも、ソロキャンプってなんだ?なんで突然行こうと思い立ったんだ?))
実家に帰省していた時、突然父が言い始めました。
「急にどうしたの?」
聞いた話を要約すると
- 仕事が忙しすぎてつらい。どこか遠くへ行きたい。
- 一人で誰にも邪魔されずにゆったり過ごしたい。
- 自然に触れて癒やされたい。
※【ソロキャンプ】というのは、その字のとおり一人で行くキャンプのことを指す言葉らしく、私は知らなかったのですが当時インターネットで話題になっていました。父は〈二人ソロキャンプ〉というマンガを読んで知ったと言っていました。私も少し読んでみましたが面白かったです。
このところ父は何日もほぼ徹夜で仕事をしているようでした。
くわえて、社内の人間関係にも大きな変化があったらしく、会社の人付き合いもここ数ヶ月間わずらわしく感じていたみたいでした。
早く出勤し、遅く帰ってきて、家でもずっと仕事をしている父の目は少しずつ、鮮魚コーナーに並んでいそうなものへと変化していきました。
疲れ果てた父が日常から離れ、息抜きをする方法としてたどりついたのが【ソロキャンプ】だったのです。
季節は冬まっただ中でしたが、その日から父はアマゾンでキャンプ用品をポチり始めました。
無駄遣いにならないかも正直心配だった私ですがそれ以上に、父は年齢的にも体力が有り余っているとは言いづらく、持病もあったためこの寒い季節に一人で遠くに行くのははっきり言って無茶でした。
「何を言うてんのあんた!!」
私以外の家族からの強い反対もあり、父のソロキャンプ計画はとりあえず次の年の春まで延期になりました。
(春になったら本当に一人で遠出するつもりなんだろうか…。)
不安はありましたが、あまり趣味を持っていなかった父がせっかく興味を持ったのだからやらせてあげたいとも思いました。
(何か良い方法はないだろうか…。)
私は父にもっと詳しく話を聞いてみることにしました。ソロキャンプの何にそんなに心惹かれているのか。なぜ一人でなければならないのか。
「主は火を眺めたい。自然を感じたい。誰もいないところで一人でゆったり過ごしたい」
そう語った父の言葉を聞いて思ったのは、多分キャンプそのものに惹かれている訳ではない。ということでした。
父の提示した条件を満たせていれば「一人で遠出」というリスクはとらなくてもいいんじゃないだろうか?私はそう考えました。
その後は愚痴を言い合いながらお酒を飲んでその日の会話は終わりましたが、私の頭の中にはその日以降も父の話が頭の片隅に残り続けていました。
そしてこうも思っていました。もしかすると父のような願いを持っている人というのは、たくさん居るのではないだろうか。
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